オーディオ製品はなぜクラウドファンディングで強いのか?大型プロジェクトが生まれやすい理由をデータから分析

クラウドファンディングでは、毎年さまざまな商品が発売されています。
家電、ガジェット、アウトドア用品、食品、モビリティ、スマートウォッチなど、そのカテゴリーは非常に幅広くなっています。
その中でも、特に大型プロジェクトが生まれているカテゴリーの一つが「オーディオ」です。
イヤホン、スピーカー、集音器、サウンドバーなど、オーディオ関連製品からは数億円規模のプロジェクトが繰り返し生まれています。
例えば、GREEN FUNDINGの支援金額ランキングを見ると、以下のようなオーディオ関連プロジェクトが上位に並んでいます。
GREEN FUNDINGの大型オーディオプロジェクト
OPSODIS 1:約9.28億円
MIRAI SPEAKER Ear:約4.48億円
Shokz OpenDots ONE:約3.17億円
Shokz OpenFit:約2.56億円
cocoe Ear:約2.51億円
Cear pavé:約2.35億円
Shokz OpenRun Pro:約1.95億円
final ZE3000 for ASMR:約1.90億円
もちろん、GREEN FUNDINGにはNAS、スマートウォッチ、アイウェア、コーヒーマシンなど、オーディオ以外にも大型プロジェクトがあります。
それでもランキングを見る限り、オーディオ関連製品が大型クラウドファンディングを生み出している主要カテゴリーの一つであることは間違いありません。
では、なぜオーディオ製品はクラウドファンディングと相性がいいのでしょうか。
単純に「イヤホンが人気だから」「ガジェット好きが多いから」という理由だけでは説明できません。
オーディオ製品の商品特性と、クラウドファンディングという販売方法の構造を考えると、そこには大型プロジェクトが生まれやすい複数の理由があります。
この記事では、実際の大型プロジェクトのデータをもとに、オーディオ製品がクラウドファンディングで強い理由を分析します。
GREEN FUNDING上位にはオーディオ製品が多い
まず、実際の数字を見てみます。
GREEN FUNDINGの公開ランキングから、オーディオ関連の大型プロジェクトを抜き出すと次のようになります。
| プロジェクト | 支援金額 | 支援者数 | 1人あたり支援額(概算) |
|---|---|---|---|
| OPSODIS 1 | 約9.28億円 | 12,740人 | 約72,900円 |
| MIRAI SPEAKER Ear | 約4.48億円 | 13,923人 | 約32,200円 |
| Shokz OpenDots ONE | 約3.17億円 | 12,754人 | 約24,900円 |
| Shokz OpenFit | 約2.56億円 | 10,991人 | 約23,200円 |
| cocoe Ear | 約2.51億円 | 6,995人 | 約35,900円 |
| Cear pavé | 約2.35億円 | 5,450人 | 約43,000円 |
| Shokz OpenRun Pro | 約1.95億円 | 8,801人 | 約22,100円 |
| ZE3000 for ASMR | 約1.90億円 | 11,228人 | 約16,900円 |
大型オーディオ8プロジェクトの支援総額
約28億円
この8プロジェクトだけで、支援総額は約28億円です。
さらに興味深いのは、単純に支援者数が多いだけではないことです。
OPSODIS 1では、1人あたりの支援金額は概算で約7.3万円。
Cear pavéでは約4.3万円。
cocoe Earでも約3.6万円となっています。
クラウドファンディングで支援金額を大きくするためには、「多くの人に購入してもらうこと」に加えて、「一定以上の商品単価を維持すること」が重要です。
オーディオ製品は、この両方を実現できる可能性があります。
過去の歴代1位をオーディオ製品が何度も更新している
さらに注目したいのが、GREEN FUNDINGにおける支援金額記録の変化です。
2022年、骨伝導イヤホン「Shokz OpenRun Pro」が約1.95億円を集めました。
プロジェクト期間中には、GREEN FUNDINGの全プロジェクトにおける歴代最高支援金額を更新しています。
翌2023年には、同じShokzの完全ワイヤレスイヤホン「OpenFit」が2億円を突破し、再び歴代最高記録を更新しました。
その後、2025年には鹿島建設の立体音響スピーカー「OPSODIS 1」が約9.28億円を達成しています。
GREEN FUNDING大型オーディオプロジェクトの推移
OpenRun Pro
約1.95億円
↓
OpenFit
約2.56億円
↓
OPSODIS 1
約9.28億円
重要なのは、これらの商品がすべて同じカテゴリーではないことです。
OpenRun Proは骨伝導イヤホン。
OpenFitはオープンイヤー型イヤホン。
OPSODIS 1は立体音響スピーカーです。
さらにランキング上位には、集音器、ポータブルスピーカー、ASMR特化イヤホンなども存在します。
つまり、「ワイヤレスイヤホン市場が大きいから売れている」という単純な構造ではありません。
異なるオーディオカテゴリーから大型案件が生まれているのです。
理由① オーディオ製品は「市場が大きいのに差別化できる」
オーディオ市場の特徴の一つが、非常に大きな市場でありながら、新しい商品の提案余地が残されていることです。
例えばイヤホンを考えてみます。
現在では多くの人がすでにワイヤレスイヤホンを持っています。
一般的に考えれば、成熟した市場です。
しかし実際には、以下のように利用シーンや技術によって新しいカテゴリーが次々に生まれています。
- ノイズキャンセリングイヤホン
- 骨伝導イヤホン
- オープンイヤーイヤホン
- イヤーカフ型イヤホン
- 睡眠用イヤホン
- ASMR用イヤホン
- ゲーミングイヤホン
- スポーツ向けイヤホン
- 集音機能を持つオーディオ製品
これはクラウドファンディングにおいて非常に重要なポイントです。
市場が存在しない商品は売ることが難しい。
一方で、すでに市場にある商品とまったく同じものを発売しても注目されません。
大型プロジェクトが生まれやすい市場
大きな既存市場
×
明確な新規性
×
新しい利用シーン
クラウドファンディングで大型プロジェクトを作るためには、「すでに大きな需要が存在する市場」と「既存商品とは違う明確な新規性」の両方が必要です。
オーディオ製品は、この条件を満たしやすいカテゴリーなのです。
理由② 「今持っている商品があるから買わない」とは限らない
冷蔵庫を2台持っている人は多くありません。
ロボット掃除機を5台所有する人も少ないでしょう。
しかし、イヤホンやヘッドホン、スピーカーを複数所有している人は珍しくありません。
- 通勤用イヤホン
- 仕事用ヘッドセット
- ランニング用のオープンイヤーイヤホン
- 自宅用ヘッドホン
- テレビ用スピーカー
- デスク用スピーカー
このようにオーディオ製品は、利用シーンによって複数の商品を所有できます。
さらに、オーディオファンの中には、新しい音響技術や製品そのものに興味を持つ層が存在します。
すでに商品を持っていることが、必ずしも新商品の購入障壁にならない。
これはクラウドファンディングにおいて非常に大きなメリットです。
理由③ 高単価でも売れるため支援金額が大きくなりやすい
大型クラウドファンディングを作るうえで、商品単価は非常に重要です。
仮に1万人が商品を購入した場合を考えてみます。
| 商品単価 | 購入者数 | 売上規模 |
|---|---|---|
| 5,000円 | 10,000人 | 5,000万円 |
| 20,000円 | 10,000人 | 2億円 |
| 70,000円 | 10,000人 | 7億円 |
もちろん単価が高くなれば購入のハードルも上がります。
しかしオーディオ製品の場合、1万円から数万円、高級製品では10万円以上の商品も珍しくありません。
数万円の商品を数千人から1万人以上に販売できる。
この「支援者数 × 商品単価」の構造が、大型プロジェクトを生み出しています。
理由④ 技術の進化を「分かりやすい物語」にできる
クラウドファンディングでは、単に性能が高いだけでは商品は売れません。
「これまでの商品と何が違うのか」をユーザーに理解してもらう必要があります。
オーディオ製品は、このストーリーを作りやすいカテゴリーです。
- 耳を塞がない
- 骨で音を聴く
- 1台のスピーカーで立体音響を実現する
- ASMRを楽しむために設計されたイヤホン
- 会話を聞き取りやすくする
技術自体は複雑でも、ユーザーに提供する価値は比較的シンプルに説明できます。
大型プロジェクトに共通しているのは、技術そのものではなく、「その技術によって、これまでできなかった何ができるのか」が分かりやすいことです。
理由⑤ 音は見えない。だからこそマーケティングの差が生まれる
オーディオ製品には大きな弱点があります。
インターネットでは音を直接体験できないことです。
どれだけ高音質なスピーカーでも、スマートフォンのスピーカーで広告動画を再生すれば、本来の音質を伝えることはできません。
一見すると、これはECやクラウドファンディングでは不利な条件です。
しかし別の見方をすると、この「伝わりにくさ」こそがマーケティングの差を生みます。
- 商品の利用シーン
- 既存製品との違い
- 技術を可視化するCGや図解
- 開発ストーリー
- 専門家によるレビュー
- メディア掲載
- YouTubeでの体験レビュー
- 試聴イベント
商品ページを作れば売れるカテゴリーではありません。
どのような文脈で商品を市場に出すのか。
誰に体験してもらうのか。
第三者にどのように評価してもらうのか。
発売前からどのように期待を作るのか。
こうしたマーケティング設計によって結果が大きく変わります。
理由⑥ 支援者1万人を超えるプロジェクトが複数存在する
大型プロジェクトでは商品単価が注目されがちですが、オーディオ案件の強さは単価だけではありません。
支援者数1万人を超えたオーディオプロジェクト
OPSODIS 1:12,740人
MIRAI SPEAKER Ear:13,923人
Shokz OpenDots ONE:12,754人
Shokz OpenFit:10,991人
ZE3000 for ASMR:11,228人
1万人以上の支援者を獲得しているプロジェクトが複数存在します。
つまりオーディオ製品は、「一部のマニアが高額商品を購入している市場」ではありません。
商品設計とマーケティング次第では、1万人以上のユーザーを動かせるカテゴリーです。
では、オーディオ製品ならクラウドファンディングで売れるのか?
もちろん、そうではありません。
市場には毎年多くのイヤホンやスピーカーが登場しています。
しかし、そのすべてが大型プロジェクトになるわけではありません。
むしろオーディオ市場は競争が激しく、
「高音質です」
「ノイズキャンセリングを搭載しています」
「長時間再生できます」
といった訴求だけでは、商品を差別化することが難しくなっています。
大型プロジェクトを見ると、共通して「誰に、どのような新しい体験を提供する商品なのか」が明確です。
OPSODIS 1は、従来のマルチスピーカー環境を構築しなくても立体音響を楽しめる商品。
MIRAI SPEAKER Earは、聞こえに課題を感じるユーザーに新しい選択肢を提供する商品。
Shokzは、「耳を塞がない」という新しいリスニングスタイルを市場に定着させました。
ZE3000 for ASMRは、ASMRという特定の利用シーンに特化しています。
つまり、成功しているのは単なる「新しいイヤホン」や「高音質なスピーカー」ではありません。
既存市場の中に新しいカテゴリーを作っている商品です。
大型クラウドファンディングは「商品力だけ」で生まれるわけではない
ここまで見ると、「革新的なオーディオ製品を開発すれば数億円売れる」ように見えるかもしれません。
しかし、実際には商品力だけで大型プロジェクトを作ることは困難です。
数億円規模のクラウドファンディングでは、プロジェクト公開前から多くの準備が必要になります。
- 市場調査
- 競合分析
- 商品のポジショニング
- ターゲット設計
- ティザーページ制作
- 事前集客
- 広告クリエイティブ制作
- プロジェクトページ制作
- PR
- メディアへのアプローチ
- インフルエンサー・YouTubeレビュー
- 公開後の広告運用
これらを組み合わせることで、初めて大きな支援金額につながります。
特に重要なのが、プロジェクト公開前の設計です。
大型プロジェクトほど、公開してから売り方を考えているわけではありません。
どの市場を狙うのか。
商品の何を最大の価値として伝えるのか。
誰に最初に購入してもらうのか。
公開初日にどれだけ支援を集めるのか。
そのために何人の見込みユーザーを集める必要があるのか。
プロジェクト開始前から逆算してマーケティングを設計しています。
まとめ|オーディオ製品はクラウドファンディングと非常に相性がいい
GREEN FUNDINGのランキングを見ると、オーディオ製品が大型クラウドファンディングを生み出している主要カテゴリーの一つであることが分かります。
その背景には、以下のような複数の要因があります。
- 市場規模が大きい
- 新しいカテゴリーを作りやすい
- 複数所有されやすい
- 高単価商品が成立する
- 技術革新をストーリー化しやすい
- レビューや動画コンテンツとの相性がいい
- 熱量の高いユーザーが存在する
しかし最も重要なのは、「オーディオ製品だから売れる」わけではないということです。
大型プロジェクトになっている商品には、明確な共通点があります。
既存商品との違いが明確であること。
その違いを一言で説明できること。
新しい利用シーンや体験を提案していること。
そして、その価値を多くのユーザーへ届けるマーケティング設計が行われていることです。
クラウドファンディングは、単なる先行販売の場所ではありません。
新しい技術やプロダクトを市場に提示し、「この商品を欲しいと思う人がどれだけ存在するのか」を大規模に検証できる場所でもあります。
特にオーディオのように、技術革新が継続的に生まれ、新しい体験を提案できるカテゴリーでは、クラウドファンディングを活用する価値は非常に大きいと言えるでしょう。
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OIKAZEでは、クラウドファンディングにおける市場調査、プロジェクト戦略の設計、ティザーサイト制作、プロジェクトページ制作、広告運用、PR、クリエイティブ制作まで一貫して支援しています。
これまでにもOPSODIS 1、MIRAI SPEAKER Ear、finalのイヤホンプロジェクトなど、大型オーディオプロジェクトのマーケティング支援に携わってきました。
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