その「ちょっと不便」が新商品のヒントに|暮らしから考えるクラファンの5つの例

雨の日、駅に着いたところで傘を閉じる。電車はもう来ているのに、ぬれた傘を袋に戻そうとして手までぬれる。「ここだけ、もう少しラクになったらいいのに」。そんな小さな不便を、あなたも一つは思い浮かべられるのではないでしょうか。
クラウドファンディングと聞くと、未来のロボットや難しい技術を使ったガジェットを想像しがちです。でも、新商品のヒントはもっと近くにあります。帰宅したときのバッグ、夕食を作る台所、洗濯物を片づける場所。毎日の動作を一つずつ見てみると、考える材料が見つかります。
ここでは、暮らしの五つの「あるある」から考えてみます。登場する商品案や場面は、OIKAZEが説明用に作った架空の例です。実在商品の紹介、人気ランキング、実測した効果ではありません。気になる場面から読んで、自分ならどんな工夫がほしいか想像してみてください。
1.傘は便利。でも「しまう瞬間」が気になる
想像してみてください。片手にバッグ、もう片方に折りたたみ傘。建物の入口で傘を閉じ、布をまとめ、細い袋へ入れようとする。雨を防ぐ役目は終わっているのに、その後の動作で少し手が止まります。
この場面から考えるなら、「もっと高性能な傘」より先に、「どの動作を変えたいのか」を決めます。布をまとめることなのか、袋へ差し込むことなのか、バッグの中でぬれた物と分けることなのか。同じ傘まわりの商品でも、狙う場面が違えば形も変わります。
口が大きく開き、傘を横から包むように収納できるケース。外出先でしまう動作と、帰宅後に開いて乾かす動作をセットで考える。
確かめたいこと:対象の傘が入るか/閉じる操作はできるか/持ち歩いたときに水が外へ出ないか/内側を乾かせるか。
ここで、収納しやすそうな絵だけを見て「もう手がぬれない」と言い切るのは早すぎます。実際にぬれた傘で試すと、入口は広くても閉じる部分に触れて手がぬれるかもしれません。改善したい一場面を決めることは、その場面を確かめる条件を決めることでもあります。
紹介写真なら、きれいに置いたケースだけでなく、入口を開くところ、傘を入れるところ、帰宅後に広げるところを並べると使い方が伝わります。商品名を知らない人でも「ああ、あのときのための道具なんだ」と理解できる入口を作ります。

2.バッグは入る量より「鍵が出る場所」?
玄関の前で、バッグの中を手探りする。スマートフォンは見つかったのに、鍵だけが底のほうへ。そんな場面を考えると、容量の大きさとは別の価値が見えてきます。持ち物が入ることと、必要な物を取り出せることは、分けて考えられます。
たとえば仕事帰りの買い物を想定するなら、荷物が増えた後でも鍵の場所が変わらないかが気になります。旅行用なら、移動中に使う物と宿で使う物を分けたいかもしれません。「収納が多い」だけで終わらせず、いつ何を探しているかを言葉にしてみます。
入口の近くに鍵の定位置を作れる、取り外し式の小さな収納パーツ。バッグを替えるときも、中の小物をまとめて移せる構造を考える。
確かめたいこと:手持ちのバッグに付くか/開閉の邪魔にならないか/鍵が外れないか/移し替えの手間は増えないか。
「ポケットを増やせば解決」とは限りません。入れる場所が増えたことで、どこへ入れたか分からなくなる可能性もあります。最初の案では鍵だけに絞り、どこへ戻すのかまで試します。取り出す瞬間だけでなく、使い終わった後の動作にも注目してください。
動画にするなら、玄関に着く、鍵の定位置へ手を伸ばす、取り出す、戻す、という短い流れが考えられます。撮影の途中で鍵の位置を都合よく変えず、実際の使い方が続けて分かる構成にします。説明を聞く前でも使う場面を想像できるかが、一つの確認点です。
一つの特徴を、暮らしの言葉に置き換える
| 仕様を伝える言葉 | 使う場面につながる説明案 |
|---|---|
| 取り外し式のパーツ | バッグを替える日に、鍵の定位置も移す |
| 入口付近に取り付ける | 玄関で使う鍵を、手の届く位置に置く |
| 鍵専用の場所を設ける | 使った後に戻す場所を決める |
右の欄は、効果の実測値ではなく説明の方向性です。実商品へ使う場合は、その構造で本当にできることを確認してから文章にします。「探す時間が半分」といった数字は、測定条件と結果がない段階では付けません。
3.料理中の「一度、どこに置こう」を減らせるか
野菜を洗って、切って、鍋へ移す。その途中で、ざる、まな板、ボウルが並び、作業台がいっぱいになる場面です。料理そのものが難しいのではなく、使っている道具を一度置く場所に困る。そう考えると、商品アイデアの焦点が少し変わります。
すべてを一つにまとめた道具を考えることもできますが、洗いにくくなったり、しまう場所を選んだりするかもしれません。ここでは機能を足す前に、今の道具と一緒に使って、作業のつながりを変える案を考えてみます。
切った食材を一時的に受け取り、鍋へ移すところまで使う小さなトレー。調理台の端に置く想定なら、置ける寸法や安定性から形を考える。
確かめたいこと:想定する台に置けるか/食材を受けられるか/持ち上げやすいか/洗う部分や片づけ方はどうなるか。
この案を紹介するなら、料理が完成した写真だけでは出番が分かりません。まな板からトレーへ移す場面と、トレーから鍋へ移す場面を見せるほうが、役割を説明できます。熱い鍋の近くで使うなど、実際の使い方に応じた材質や使用条件の確認も必要です。
読者が知りたいのは、道具が一つ増えた結果、何が変わるかです。作業がつながっても、洗い物や収納の負担が増えるなら、その点も判断材料になります。便利そうな瞬間だけを切り取り、使い終わった後の手間を隠す構成にはしないようにします。
4.物干しは「干していない時間」も考えたい
洗濯物を干す道具は、使っている姿ばかりを想像しがちです。でも、片づけたときの置き場や、次に使うときの出し方が気になる場合もあります。部屋の中で干すなら、人が通る場所や扉の開閉との関係も考えたいところです。
ここからは、「たくさん干せる」という方向だけでなく、「使わない時間にどう置くか」という方向が見えてきます。同じ道具を別の時間帯から眺めるだけで、考えるテーマを変えられます。
使わないときに薄くたたみ、指定の場所へ置ける小型の物干し。展開するところから収納するところまでを、一続きの使い方として設計する。
確かめたいこと:展開時と収納時の寸法/置いたときの安定性/開閉時の指の位置/使える衣類と荷重の条件。
写真は、洗濯物を掛けた姿と、たたんだ姿の両方があると判断しやすくなります。撮影時には、周囲の家具や通路との関係が分かる引きのカットも用意します。寸法だけを読むより、自分の部屋で置けるかを考える手がかりになります。
一方、薄くたためることから「どんな部屋にも置ける」と広げるのは避けます。広げるための空間は別に必要かもしれません。収納寸法だけでなく、使っている状態で必要な場所を示すことで、商品を受け取った後の想像違いを減らす説明につながります。
5.ボトルは「飲むとき」より「洗う夜」に注目
朝は気に入って持ち出したボトルも、夜に洗う段階で気持ちが変わるかもしれません。ふたを分ける、細かな部分を洗う、乾かす、元に戻す。飲むための道具を、手入れの順番から見直す例です。
この場面では、飲み口の形や保温の説明とは別に、どこまで外せるか、何を使って洗うか、部品をなくさず乾かせるかが気になります。機能の名前を増やすより、毎日続ける動作を見せる切り口が考えられます。
ふたや小さな部品を分けて置ける、ボトル用の乾燥スタンド。洗った物の置き場と、翌朝に組み立てるときの見つけやすさを考える。
確かめたいこと:対応するボトルや部品の大きさ/倒れにくい置き方/水の行き先/スタンド自体の手入れ。
ここでの提案は置き方を整理することであり、「必ず早く乾く」「衛生状態が改善する」といった効果を示したものではありません。もし乾燥時間を特徴にするなら、室内の条件、置く物、水分の状態、判定方法などを決めて調べる必要があります。
伝える写真も、ボトルが置かれた完成形だけでは足りません。部品の置き場所、外した状態、スタンドを洗うところまで見せれば、自分の道具と一緒に使えるかを考えやすくなります。使う人が持っている物との組み合わせも、新商品の説明に含めてみてください。
あなたなら、どの工夫を使ってみたい?
五つの案を読んで、全部が欲しいと感じる必要はありません。ふだん長傘を使う人には折りたたみ傘のケースが響かないかもしれませんし、鍵をポケットに入れる人はバッグの定位置に困っていないかもしれません。その違いを考えること自体が、誰に向けた商品なのかを見つける手がかりです。
- この場面は、最近の自分にもあっただろうか。
- 今使っている道具と一緒に使えるだろうか。
- 一つ増える道具の置き場や手入れまで、引き受けたいだろうか。
たとえば鍵の収納案なら、取り出しやすさに興味があっても、バッグの見た目を変えたくない人はいるはずです。それなら外から見えにくい取り付け方を考える余地があります。逆に、取り外しが面倒なら固定式を好む人もいるでしょう。意見の違いを一つの正解へまとめず、使う場面の違いとして残してみます。
商品を作る側も、こうした答えを聞いてから見せる順番を調整できます。「小さなパーツです」という説明より、「このバッグを毎日使い続けたい人へ」と始めたほうが伝わる場合もあります。これは正解のコピーを決める作業ではなく、誰が読んだときに自分の話だと感じるかを考える作業です。
「新しい」は、難しい技術だけではない
五つの例に共通するのは、身近な動作の一部分を見ていることです。傘そのものを作り直さなくても、しまう道具を考える。バッグ全体を変えなくても、鍵の置き場を考える。大きな発明を目指す前に、どこで手が止まるのかを丁寧に見ていきます。
プラットフォーム側の考え方も確認しておきましょう。Makuakeの新しさに関する公式解説では、新商品に加え、既存商品の機能、デザイン、素材を変える例などが紹介されています。ただし掲載可否は商品ごとに判断されるため、この記事の案がそのまま掲載できるという意味ではありません。
また、Kickstarterの制作ガイドでは、何を作るのか、着想の背景、計画や日程などを伝え、スケッチや試作品も使って説明することを案内しています。アイデアの面白さに加えて、誰がどう実現するかが読める状態を目指したいところです。
この三つはOIKAZEの検討用の整理です。項目に丸が付けば成功するという採点表ではありません。気になる商品がある人は、読む側として「自分の場面に合うか」を考えるためにも使えます。
商品アイデアを、一枚のメモにしてみる
最初から立派な企画書を作る必要はありません。スマートフォンのメモに、次の四つを書いてみてください。困った場面、今している工夫、変えたい動作、まだ分からないこと。商品名を先に考えるより、何を確かめればよいかが見えてきます。
| メモすること | 鍵の収納を考える場合の例 |
|---|---|
| どの場面? | 買い物から帰り、玄関で鍵を出すとき |
| 今はどうしている? | バッグの底を手探りしている想定 |
| どこを変えたい? | 荷物が増えても鍵の定位置を保ちたい |
| まだ分からないことは? | 入口に取り付けても開閉を邪魔しないか |
誰かに聞くときも、いきなり「この商品が欲しいですか」と尋ねるより、「最近、同じ場面で困ったことはありますか」「そのときどうしましたか」と、実際の経験を聞く方法が考えられます。相手の答えを先回りせず、困っていないという回答も残します。
少人数の感想を市場全体の需要として扱わないことも大切です。友人が面白いと言ってくれたことと、価格やお届け時期を理解して申し込むことは違います。反応を集めたら、どんな条件なら使うのか、どこが分かりにくいのかを次の試作へ戻してください。

見せ方も、難しい説明から生活の場面へ
使う人の場面が決まったら、記事や商品ページの入口もそこへ合わせます。「新構造を採用」と始める前に、「雨の日、傘をしまうところで困っていませんか」と場面を示す。その後で構造と確認結果を説明すると、何のための工夫なのかを追いやすくなります。
- 場面:玄関に帰り、バッグから鍵を出そうとする。
- 工夫:鍵の定位置になるパーツの構造を見せる。
- 操作:取り出して使い、元の位置へ戻すまで映す。
- 条件:取り付けられるバッグや、使う前の確認を示す。
これは撮影構成の例であり、実際の検証動画ではありません。別の商品をわざと使いにくく見せる必要もありません。自分たちの商品の動作と条件を見せ、見る人が使い方を判断できる構成にします。具体的なカットを準備するなら、商品写真の撮影リストも参考になります。
その「ちょっと不便」、まず一場面だけ教えてください
傘、バッグ、台所、洗濯、ボトル。この記事で自分の暮らしに近い場面があったら、今日一度、その道具を使う前と使った後まで眺めてみてください。機能表からは見えなかった、小さな手間や工夫に気付くかもしれません。
すでに商品を作っている場合は、全部の特徴を説明しようとする前に、「誰の、どの場面を変えたい商品か」を一文にします。その一文に合う実機、写真、説明がそろうかを見ていくと、次に準備するものも具体的になります。疑問を整理するときは、支援前に答えたいFAQの考え方も使えます。
自社商品のどこを入口にするか、クラウドファンディングで何を見せるか迷ったら、OIKAZEの無料査定フォームへ。「クラウドファンディング概要」欄に、商品概要と、使う人のどんな場面を変えたいかを分かる範囲でお知らせください。資料がある場合は商品URLや現在の開発状況、公開希望時期も添えると、検討したいことを共有しやすくなります。

